日本エネルギー会議

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『エネコン・コラム 呻吟語』原発・優先審査という名の落とし穴

九州電力・川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県、合計出力178万kW)に続いて、関西電力・高浜原発3、4号機(福井県、合計出力174万kW)が優先審査の対象になる見通しが高くなった。

原子力規制委員会が5月16日の審査会合で、関西電力が耐震設計の基となる地震の最大の揺れ「基準地震動」を引き上げた内容を了承したためだ。これにより、高浜原発が川内原発に次いで、規制庁の人員を集中して安全審査にあたる「優先原発」になる見通し。ただし、この「優先」という表現が、意外に曲者である点を見逃してはならない。

◆目につく「上から目線」の恣意的姿勢
最初の「優先原発」となった川内原発では、当初、「今夏のピーク需要に再稼働ができるのではないか」との見方が広がったが、実際の審査作業は想定のようには進んでいない。審査をめぐる規制委・規制庁と九州電力の会合では、説明了解が得られたものの、それが申請書に記載されていないなどとして、27項目42カ所の記載漏れがあると指摘され、これが「不備」と公表された。あたかも、九電側のミスであるかのように伝えられているが、内実はいささか異なる。

さらに、火山の監視体制や対応方針も後から指摘するなど、事業者サイドがいかにも十分に対応できていないかを印象づける手法が目につく。つまり、規制委・規制庁の「上から目線」が随所に見て取れる。

◆全く感じられないコミュニケーションの大切さ
その代表格が、島崎邦彦・規制委委員長代理との印象が強い。自らの思考を曲げず、事業者側にひたすら「恭順さ」を要求する姿勢に、説明にあたる事業者は時にいらだちを感じるようだが、あとの「しっぺ返し」を警戒してか、なかなか正面から反論する場面は見られない。

こうして、事業者側はあたかも言われるままに対応せざるを得ない状況へと追い込まれる。そこには、米国など海外の原子力事情に詳しい専門家が指摘する「規制側と事業者側の良きコミュニケーションこそ、安全性向上の基本」というような思考は全く感じられない。どうも、この島崎氏の流儀はこれからも変わりそうにない。

結果として、川内原発の今夏までの再稼働は実現が極めて難しい方向に日々動いている。16日の審査会合で、島崎氏は「高浜(原発)はヤマを越えた」と述べているが、この言葉も真に受け止めないほうがよいではないか。

◆多い落とし穴、規制委の抜本改革は政治の責任
他の原発の安全審査も含めて、同氏らが仕掛けた“落とし穴”はいくつも用意されている。それを阻むためには「原子力規制委員会の見直し」に真剣に取り組む以外、残された道はない。その覚悟を持って立ち向かわねば、日本における「原発ゼロ」「原子力技術の断絶」「福島廃炉作業への支障」という、あってはならない道筋を歩むことになるのは避けられない。

原子力発電あっての規制委・規制庁だ。「資源小国・日本における原子力発電の必要性、重要性」を十分に認識し、その役割を理解した上で、自らの職責を果たすのが国益を考えた行政担当者の責務であることを忘れてはならない。事業者のみならず、原発立地地域、一般国民等に対して、科学的に、現実的にしっかりと率直なコミュニケーションを図る体制を確立、実行してこそ存在意義がある。

規制委の抜本改革には、法改正や国会同意人事問題が絡む。それゆえ、政治は本気でこの問題とその裏に隠された落とし穴を見抜いて取り組まなければ、島崎氏らの思うツボにはまってしまう。日本のエネルギー危機を乗り越えるために、真に効果の上がる行動に踏み出す段階を迎えているのではないだろうか。

秀啓

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