日本エネルギー会議

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再エネ導入策を早期に検証・見直し、電力安定供給を確保せよ

太陽光発電の設置認定急増などを背景に、再生可能エネルギー事業者が発電する電気の新たな受け入れに制約や条件を設ける動きが全国の電力会社に広がりつつある。

現在の固定価格買取制度(FIT)は再エネ設備で発電した電気を、電力会社が原則、全量買い取ることを義務付けている。だが、十分な対応が取れないまま、発電量が気象条件によって大きく変動する太陽光発電や風力発電からの調達量が増えすぎると停電や周波数の乱れを生む原因となり、電力の安定供給に支障をきたす。このため、太陽光発電導入が急テンポで増加している九州電力や風力発電の条件に適した北海道電力などで、受け入れ制限を実施せざるを得ない状況にあるほか、他の電力会社でも送電系統の関係から一部地域で受け入れ中断を余儀なくされているのが実情だ。

こうした事態は専門家の間では当初から指摘されていたものだが、「原子力発電所を止めても、再エネで埋め合わせできる」といった非現実的な“再エネ積極論”によって軽視されてきた。ところが、実際にはFITによる賦課金上昇による需要家の負担増のみならず、安定供給にも危険信号が灯りつつあるのだ。

経済産業省・資源エネルギー庁は、総合資源エネルギー調査会新エネルギー小委員会の下に、再エネの系統接続可能量などを検証する有識者による専門部会を設置する方針だが、この場で再エネ導入に関する問題点を徹底的に洗い出し、早期に制度を抜本的に見直す必要があると主張しておきたい。

◆菅直人・元首相の“残滓”を絶て
そもそも現行の買取制度は、福島事故を受けてエネルギー政策を大転換させた菅直人・元首相の「申し子」といえるものであり、政府が需給調整の難しさ、送電網整備の必要性、地域の実情などの課題を慎重に検討した産物ではない。いわば、菅・元首相の“残滓”といえるものだ。

エネルギー資源小国である日本の実情、地球温暖化への対応などから、再エネを効率的かつ現実的、さらには賦課金負担をできる限り抑制しながら、しっかりと育てていくのが「王道」である。新規参入者に「投資商品」のような受け止め方まで生まれ、政府も普及優先に過ぎた制度の見直すべきところは見直し、課題を克服した実現可能で他の電源と十分に調和のとれた再エネ導入の道筋を確立しなければならない。

◆制度見直し議論で克服すべき課題は山積している
表面化した再エネ電力受け入れの制約実施について、専門家は「国が太陽光発電などを無計画に認定してきたためだ」と指摘する。九州電力の制限がメディアなどで取り上げられているが、その背景には九電管内は土地価格も安く、日照時間も他地域に比べると長いため、再エネ事業者の多くが太陽光発電所進出を決め、認可申請を行ったという事情がある。一方、北海道や東北は比較的風が吹きやすく、風力発電所立地に適した地域が多い。こうした地理的事情を考慮せずに、ほぼ全国一律に制度を適用したところからして問題がある。

本来ならば、発電能力に直接的に結びつく全国各地の気象条件を十分に検証し、どの地域に、どの程度の太陽光発電所や風力発電所を設置することが最も効率的であるかを見定めるべきである。その結果を受けて、地域別の発電能力をはじき出し、買い取る側の電力会社の送電網整備の必要性やスケジュールを決める必要がある。

◆微妙な電力供給には細やかな神経が求められる
さらに、再エネが避けて通れない出力変動をカバーするために、調整能力を発揮する火力発電や揚水発電などといったバックアップ電源をどういった形で組み合わせるか、また蓄電池をどのように活用するかも解決されていない。急激な出力変動は、よりきめ細かい周波数調整が求められる。やや専門的な話であるが、通常の電動機の場合で動作に変調をもたらさないための許容範囲はプラスマイナス1ヘルツとされ、コンピューターの許容範囲はプラスマイナス0.5ヘルツといわれる。ちょっとした周波数変動によって、工場における製造ラインの停止やコンピューターシステムダウンにつながる危険性があるということだ。

電力供給は「同時同量」が鉄則であり、再エネ電力が多すぎても、少なすぎても停電をもたらす可能性はある。つまり、再エネ電力を活用するには、常にその変動を読み取り、バックアップ電源によって対応し続けなければならないのである。

◆最適な条件を作り上げねば、再エネは本来の役割を果たせない
このような電力供給の細やかな神経の必要性を知れば知るほど、出力変動がつきまとう再エネ電力の導入は慎重に進めなければならないと感じる。制度見直しにあたっては、「同時同量の原則」や「電力供給に欠かせない細やかな神経」にも目を向けるべきだろう。そのうえで、全国のどの地域でどの程度の再エネ発電が可能なのか、それによって発電される電気を最も効率的に利用するには他の電源とどのようにバランスをとるのがいいのか、さらに電力会社管内を超えた供給体制確保のために送電網の整備をどのようにするべきか。送電網拡充にかかる費用は誰が、どのような形で負担すればよいのか。詳細な分析を経たうえで、年度ごとの導入目標を作成し、買取価格も慎重に査定するべきだ。

こうして考えてくると、専門部会で検討、検証された結果を受けて、新エネルギー小委員会で改めて本質的な議論を展開する必要が生まれてくる気がする。こうした難問を解決していかなければ、再エネは期待される能力を発揮できないからである。いささか「情緒的」で、かつ強引、無計画ともいえる再エネ普及計画を見直し、しっかりと磨き上げなければ、新たなエネルギーミックスの一翼を担う役割を果たせるとは思えない。

2014.9.30
日本エネルギー会議事務局

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