日本エネルギー会議

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原発再稼動、規制委は効率的な審査に取り組め

2013年9月から続いてきた「稼動原発ゼロ」の異常事態にようやく終止符が打たれた。九州電力川内原子力発電所1号機(鹿児島県薩摩川内市、加圧水型原子炉=PWR、出力89万Kw)が、8月11日に起動開始。14日に発電・送電を始め、9月上旬に最終的な検査を終えて本格的な営業運転に入る予定だ。

これに続いて、同発電所2号機(同)が10月中旬にも再稼動する見通しだが、当初は「半年程度」とされていた安全審査が大幅に遅れ、1基の再稼動に2年1カ月もの長い期間がかかった現実を十分に検証。今後の効率的、合理的な審査を実現するように強く求めておきたい。

◆メディアの恣意的な報道は大いに疑問
こうした対応を求める背景には、原発停止がもたらしているマイナス影響の大きさを正確に認識しようとしない社会的な風潮があるからだ。猛暑に見舞われた今夏の電力需給を、「原発ゼロでも電力は足りており、停電も起きていない。国民の節電意識の高まりと太陽光発電の果たす役割が大きい」と報道するメディアさえある。

果たして、この恣意的ともいえる主張を単純に受け止めていいのか。我が国の電力供給の実態は、電力各社がいったん「現役引退」させた老朽火力発電所を突貫作業で稼動再開させるとともに、定期点検の延期措置などといった緊急対策を駆使して安定供給維持に取り組み、大停電をしのいでいるのだ。

その結果、総発電量に占める液化天然ガス(LNG)、石炭、石油といった化石燃料依存度は全体の約88%(2014年度)にまで高まっている。ほとんどを輸入に頼り、発電量に占める燃料費比率の高い化石燃料の使用量の急上昇によって電気料金引き上げを余儀なくされ、東日本大震災以前に比べて全国平均で家庭向けが約2割、産業向けは約3割もアップ。一般家庭での負担増はもちろん、電力多消費型産業の経営に大きな打撃を及ぼすとともに、料金上昇分を転嫁しにくい中小企業は廃業の危機に追い込まれるケースさえ生んでいる。

国全体としても原発停止・火力発電焚き増しによる化石燃料輸入増加額は年間3兆6千億円にも達し、この分だけで1日あたりざっと100億円もの国富が流出しているのだ。さらに、世界的に関心の高い二酸化炭素(CO2)排出量も大幅に増えた。安定供給維持に寄与していると持ち上げる太陽光発電は固定価格買取制度(FIT)導入時の高価格設定の影響から、電気料金に上乗せされる再生可能エネルギー賦課金も年を追って高くなっている。

◆審査の論点や基準がいまだに不透明
一方で、福島事故の教訓を生かして、電力各社は地震・津波などを想定した高い防潮堤や非常電源の多重化などに取り組み、国内のみならず海外の専門家からも、安全性向上の高い評価を得ている。こうした国の姿を正確かつ冷静に判断、原発を再稼動させ、電源バランスのとれたエネルギーミックス確保に着実に歩むべきではないか。

そのためには、2013年7月に施行された原発の新規制基準の審査を合理的、効率的なものにすることが欠かせない。しかし、原子力規制委員会・規制庁による作業は遅れに遅れ、電力供給の「非常事態」を克服できる見通しは全く立っていない。背景には規制委・規制庁の審査の論点や基準が不透明で、対応する電力会社側がどのように説明を尽くせば前進するかの見通しが持てない議論の進め方の問題点がある。

審査を進めるため、各方面から規制委・規制庁の要求内容を文書化して、議論を絞り込んでいく努力が欠かせないとの指摘が出されてきたが実現の気配はない。再稼動を機に審査方法の「ひな型」を作り上げて、審査のスピードをあげる方針を規制委・規制庁は表明してきたが、いまこそ、その道を本気で歩み始めるタイミングである。

2015.8.28
日本エネルギー会議事務局

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